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全身がん政治家(与謝野 馨) [本]

「政策通」と言われていたことは知っていましたが、
具体的には与謝野馨氏がどのような政治家だったのかを
知りません。
でも、この本は本当にいい本だと思いました。

患者、特にがん患者の書く闘病記は、悪く言えば「病気自慢」、
「悲劇のヒロイン」、大病と闘う自分という意識に囚われて
しまったものが多い中、この本はそういう闘病記とは
まったく違うものでした。
ご本人も「患者であることに夢中になってはいけない」と
闘病する自分を客観的に見ていた様子がうかがわれます。

もちろん議員として多忙で、病気のことばかり考えて
いられなかったというのもあるかもしれませんが、
そんななかでも医師とコミュニケーションをとって
信頼関係を築き、その時々の最善の治療をしていた
こともわかります。

もちろん与謝野さんのように黙って闘病している人が
多数であることはわかっていますが、闘病者の集まりなど
行くと、何か違和感のようなものを感じていました。
がん患者の労働環境などをよくする活動などは積極的に
すべきだけど、「私はこんな大病をしてるんだから……」
という気持ちはうまく自分で扱っていかないと傲慢にも
つながる難しいものだと思っています。
病気であることを理由に甘えすぎてはいけないし、
「ノーマライゼーション」を求めるのではなく、特別
扱いを求める姿勢には距離を置くようになりました。

その点、政治家という立場上、病気を公表できなかったのも
あると思うけど、与謝野さんの病気との付き合い方、
向き合い方は参考になるものでした。

もうひとつ、すごい本が絵門ゆう子さんの「がんと一緒に
ゆっくりと―あらゆる療法をさまよって」です。
アナウンサーだった方のようで、彼女が標準治療を拒否して
民間療法に走っていたことは有名な話のようです。
その顛末を綴ったのが本書ですが、がんに効くマットレスとか、
温灸器……etcとか驚愕内容でした。
ただ、そういう方向に流れる人は少なくはないので、そちらに
走ってしまった原因(医師とのコミュニケーションミスなど)にも
目を向けないと、その問題の本質には迫れないのだと思います。

その後、絵門さんは標準治療を受けるようになります。
民間医療でさんざんカモられた話を共有していく活動はいいと
思いますが、余命告知に反対するなど医療に積極的に物申し、
「がん患者代表」のような活動とその後の本は蛇足だったのかなと、
その後の本を読んで思いました。
与謝野さんの言うところの「患者であることに夢中になりすぎて
いる」、と。



全身がん政治家

全身がん政治家

  • 作者: 与謝野 馨
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/06
  • メディア: 単行本


がんと一緒にゆっくりと―あらゆる療法をさまよって (新潮文庫)

がんと一緒にゆっくりと―あらゆる療法をさまよって (新潮文庫)

  • 作者: 絵門 ゆう子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: 文庫


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